サウスバウンド

サウス・バウンド

サウス・バウンド

元過激派の父と元活動家の母を持つ小学生、二郎とその妹、桃子。自分勝手で国に反発する父に嫌気がさす一方で自分をとことん貫くその姿には憧れたり、いじめっ子に恐喝されて自分の無力さを嘆くと共に役に立たない先生や大人たちを見て社会の理不尽さを実感したり、初恋や性など少しずつ異性に興味を持ち始めたり、小学生という極めて多感なお年頃を描いた作品。ジャンルもあらすじも全くわからず、奥田英朗さんの作品も初めてで、ただ表紙にシーサーが載ってるってだけで借りて読んだんだけど、素直に面白かった。テーマは“家族の絆”と“子供から大人への成長”。とは言ってもジメジメした話ではなくて、さっぱりとコミカルに。こんなに波乱万丈な小学生時代を送る子供なんてほとんどいないと思うけど、でも事実は小説よりも奇なりって言うし。「小学生だって大変なんだ!」という二郎の心の叫びが聞こえてきそうで面白い。


また一人、ステキな作家さんに出会えました。

「淳以上にあっさりとした別れだった。でも、悪くなかった。センチになるのは、いつも大人たちだ。子供には、過去より未来の方が遥かに大きい。センチになる暇はない。」


(図書館)