さよなら妖精 / 米澤穂信

さよなら妖精 (創元推理文庫)

さよなら妖精 (創元推理文庫)

飾り付けとして謎解きを、隠し味として紛争問題を織り交ぜた青春小説。基本的に会話で物語が進み、時折、主人公の“哲学的思考”が入る。そのテンポが気持ち良く読ませてくれる。心に深く刻み込まれるような類の作品ではないが、切なく、読後感のよい一冊でした。


主人公が、なんとなく高校の友人と重なったのは内緒。

文原は先に、おれがなにかに賭けるようなことをするとは思えない、というような意味のことを言った。それは実際その通りだった。おれは、これになら賭けてもいいと思えるようななにものにも出会ったことがない。その価値があると思えるものに触れたことがない。おれはそれを、仕方のないことだと思っていた。二十世紀の日本で生きるに問題のない生活を送っている、その望んでも得られない幸福のいわば代償だと。しかしそれはそんなに遠いものなのか?現にマーヤはここにいるというのに。
ユーゴスラヴィア。どんな国なのだろう。