鹿男あをによし / 万城目学

鹿男あをによし

鹿男あをによし

日常に少しだけ細工を施して面白くした日常系ファンタジー。そんな雰囲気が森見さんを彷彿とさせると思ったら、二人とも同大学出身で互いに親交があるらしい。なるほど、類は友を呼ぶってか。


きちんと盛り場があって間違いなく良作の部類に入るが、個人的には森見さんのほうが好きです。文体が。構成は万城目さんのほうがうまいかな。

「あ、少し待ってくれ」
鹿が俄かに声を上げた。何事かと目を向けると、ぼろぼろと肛門から糞を盛大に吐き出した。草むらに転がる黒い斑点を、おれと堀田は黙って見下ろした。
用が済んだところで、鹿は濡れた黒い瞳を向け、力強い声で告げた。
「世界を救うんだ――先生」