カフーを待ちわびて / 原田マハ

カフーを待ちわびて

カフーを待ちわびて

沖縄の離島を舞台とした切ないラブストーリー。第1回日本ラブストーリー大賞受賞作、だけあって涙のこぼれる良い作品。特に主人公、明青の幸や周囲の人々の間で揺れ動く気持ちがリアルに描かれていて好き。そうなんだよね、恋をすると何を信じていいのかわからなくなるんだよね。沖縄特有の時間の流れ方もまた心地良く表現されている。絶対にハッピーエンドになって欲しいと願いながら、最後まで一気に読みました。


ちなみに作者紹介のところを読んでたらこの人、原田宗典の妹さんでした。なんと。

幸のこと。
ただそればかりを考えていた。
幸を胸いっぱいに抱きとめたあの日から、不思議な感情が明青を支配していた。腕の中めがけて飛び込んできた幸の身体の感触は、こうしているあいだも鮮明に蘇る。それでいて、それはまったく現実のものとは思えなかった。
軽やかな、はかない身体。
甘い花の香りがするやわらかな髪が、ふわりと明青の顔にふりかかった。
頬を撫でるその感覚を、何度も何度も明尾は反芻した。