詩羽のいる街 / 山本弘

詩羽のいる街

詩羽のいる街

お金を一切持たず、親切を持って人と人とを結びつける奇跡の女の子、詩羽の物語。テーマは「情けは人の為ならず」。情けをかければやがてそれは自分に戻ってくる。情けは人の為ではなく、自分の為である。非常にハートウォーミングなお話。


ただこの賀来野市は一つの理想郷なのかなと思ってしまう。現実には詩羽という触媒は存在しない。それでも親切という化学反応は起こるだろうか。長船を改心させてしまうほどの化学反応が。なんだか詩羽の存在が、逆説的に人間の愚かさを表現しているように感じる。


それでもやっぱり、人間の持つ善意を信じたくなるような良作でした。

「仕事……」
「そう」
詩羽は胸に手を当て、誇らしげに微笑んだ。
「これがあたしの仕事――他人に親切にするのが」