凸凹デイズ / 山本幸久

凸凹デイズ

凸凹デイズ

九品仏の小さなデザイナー事務所を舞台とした“お仕事小説”。『ある日、アヒルバス』の山本幸久さんの作品。あいかわらず生き生きとしたキャラクターを描く。やっぱりこの人の作品は好きだ。お仕事は大変だという現実は変わらないが、それでもまた明日一日がんばってみようと思わせてくれる良い作品です。

まだ誰もいないかなとドアのノブを回すと、鍵はかかっていなかった。思いきりよくひらくと、事務所には大滝も黒川もいた。ふたりは同時に顔をあげ、凪海を見た。
「お、おお」と黒川が手を挙げた。
「おかえり」大滝は笑顔でむかえてくれた。おかえりなんてひとに言われたのはひさしぶりだったのでうれしかった。