ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 / 辻村深月

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (100周年書き下ろし)

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (100周年書き下ろし)

母親を殺して失踪中のチエミとその行方を探すみずほ。作品自体はミステリーながら、テーマは「女」。女同士の友情や結婚、出産などといった三十前後の女性に否応なく訪れる宿命とミステリーをうまく織り交ぜた作品でした。現在と過去が境なく描かれているので少々読みにくいところが無きにしも非ずだが、男性よりも少しだけ複雑な女性の人生はそれ故に客観的に面白い。

このドアを閉じてしまったら、もう二度と戻ってこられない。その程度のことを覚悟できるくらいには、冷静だった。
(中略)
次に開けたとき、戻ってきたとき、お母さんも居間も元通りになっているんじゃないか。朝帰りの私を振り向きもせずに「もう朝よ」と言うんじゃないか。期待がまだ続いていた。