香港の甘い豆腐 / 大島真寿美

香港の甘い豆腐

香港の甘い豆腐

17年間不在だった「父親」に会いに香港へ渡る彩美の物語。テーマは「居場所探し」。


子供にとって親の過去というものは、改めて尋ねなければ、当然ながら謎に包まれている。恥ずかしい話ではあるが、僕自身も両親の友人は愚か、なり初めすら知らない(結婚するときに聞こうとは思っているが)。でもそれを知ることが、自分自身の新たな一面を知ることにつながることは大いにありうる。彩美のように。子供なんて両親の分身みたいなものなのだから。

つまり、私は、誰かの子供という役割が心底億劫なのだった。
母だけで、もう充分なのだった。