猫を抱いて象と泳ぐ / 小川洋子 / ★★★★☆

猫を抱いて象と泳ぐ

猫を抱いて象と泳ぐ

「リトル・アリョーヒン」と呼ばれたひとりのチェス指しのお話。チェスをテーマにした物語ながら、この小説自体がまるでチェスのよう。チェスの盤上というのはとても静かで、駒を動かす音だけがときおり響く。この物語もまるで深い森の奥にある湖のように穏やかで、透明で、たまに波紋が現れたかと思えばまた元の湖面に戻る。駒が復活しないチェスは物語が進むつれてその淋しさを増し、その静寂はより一層深くなる。しかし、チェスの棋譜がそれを指した人の人生の詩を奏でるように、本小説もまたリトル・アリョーヒンの人生を深く紡ぐ。


こんな静かな世界もあるんだなあと、まるでお伽話の世界に迷い込んだ子供のような気持ちにさせてくれました。ステキ。

“大きくなること、それは悲劇である”


(4/50)