ミュージック・ブレス・ユー!! / 津村記久子 / ★★★★☆

ミュージック・ブレス・ユー!!

ミュージック・ブレス・ユー!!

一日中ロックを聴いているパンクなアザミ。成績優秀だけど口より先に手が出るチユキ。一生に一度の高校生活が、静かに終わりを告げようとしている――


高校生という多感な時期。世界のことなんてわからないし、興味もあまりないし、ただ自分のことで精一杯で、喜怒哀楽が巡り巡り、大切なのは友情と恋愛で、とにかく毎日を生きるだけ。誰もが通った道ではあるけど、それを表現するのはすごく難しい。そこを丁寧な文体で表現しきっていて、結構物語に入り込んでしまった。この時期に読むのが一番な穏やかな一冊。好きです。

音楽のことだけを考えている時、アザミの頭の中でアザミはアザミ自身でなかった。アザミは、アメリカの西海岸だか中西部だか北部だかフロリダ半島だかカナダだかの男の子で、学校をさぼてtぐしゃぐしゃのハーフパンツを穿いてつまらなさそうな顔をして、女の子につれなくされたことについての歌をプレイするために、友達のうちのガレージに急ぐ途中だった。日本の女子高校生であることを恥じるわけではないけど、それを謳歌できる同世代の女の子たちを遠く感じるのは事実だった。


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