四畳半神話大系 / 森見登美彦 / ★★★★☆

四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)

大学三回生。幻の至宝と言われる「薔薇色で有意義なキャンパスライフ」をこの手に納めんと奮闘する私であったが、それは本当に、ただの幻であった。いや、そもそも私は奮闘しただろうか。人生は選択の連続である。もしあのとき違う選択をしていたら……4つの並行世界を舞台に送る青春……これは青春なのか?


太陽の塔』に続く森見登美彦の長編ニ作目。世界観は『太陽の塔』と同じで、どうしようもない大学生のどうしようもない日々を描く。さらに本作では平行世界という小細工(あえてこういう表現をしたい)が、ゆるさの中にも哲学的な味付けを加える。大学生になって自由を謳歌しつつ、それでも運命の前ではやはり自分は無力なのだと知る。青春です。

大学三回生の春までの二年間、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう。異性との健全な交際、学問への精進、肉体の鍛錬など、社会的有為の人材となるための布石の数々をことごとくはずし、異性からの孤立、学問の放棄、肉体の衰弱化などの打たんでも良い布石を狙い澄まして打ちまくってきたのは、なにゆえであるか。


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