リスクテイカー / 川端裕人 / ★★★★★

リスクテイカー (文春文庫)

リスクテイカー (文春文庫)

ケンジ、ジェイミー、ヤン。ビジネススクールを卒業した三人は理論物理の複雑適応系を応用した外国為替予測システムを開発、ヘッジファンドを立ち上げる。マネーの海へ出航した彼らの船出は順調に見えたが、すぐに金融市場は新参者の三人に牙をむく。ただ信用によってその存在を確立するマネー、果たしてその本質とは何か。そして数十億ドルを手にした先に見える世界とは。まさに世界を相手にしたマネーゲームが今はじまる。


再読。名作です。金融取引の場面が一番印象に残っていたんだけど、改めて読み返してみたらマネーに関する、延々と続く、金融史を絡めた深い考察が書かれてあって、記憶の中の作品よりも重く、ずっと面白かった。専門用語が乱立してその技術的な側面はなかなか理解できるようなものではないけれど、例えば目の前にある一万円札が、ただの紙切れがなぜ人を狂わすほどの力を持っているのか。そんなことを考えさせてくれる。そしてその力というものがこの上なく脆弱なものであるということに気付かされる。


名作です。

つまり、マネーには『価値の尺度』、『支払いの手段』、『価値の貯蔵』の三つの機能がある。

ここにきて、マネーはお互いにお互いを計り合う、無根拠であるのに絶大な権力をふるう神になったのだ。(中略)実質的には無価値であるはずの記号が、相互に計量しあい、高速に回転し続けることによって存在し続ける。


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