生きてるだけで、愛 / 本谷有希子

生きてるだけで、愛

生きてるだけで、愛

寧子と津奈木の同棲生活。三度、本谷作品。


前の二作品に比べれば若干現実的で現代的なお話。それでも屋上で全裸の恋人に叫ばれる場面に一生のうちで遭遇する可能性なんて皆無だろうけど。本作の書評を読んでみると「寧子とシンクロした」という言葉をところどころでお見かけして、やはり現代の若者たちは孤独なのかなと一抹の不安を抱いてしまった。自分のことを少しだけ棚に上げて。

緑色の吐瀉物を出して、この先何ともつながらなくて、五十歳になったあたしの頭がやっぱりおかしくても、雪降る屋上で首都高をバックに全裸で立っているこの自分の姿が津奈木にとっての富士山だったら、それで満足してやる。