美丘 / 石田衣良 / ★★★☆☆

美丘

美丘

誰かを理解したいと思ったとき、その人の好きな小説を読むというのはなかなか良い方法なのかもしれない。小説は人を映す鏡なのだから。


というのは本作とは直接は関係のない所感で、とりあえず久しぶりの石田衣良さん。はじめに言っておくと、石田衣良さんの作品はあまり好きじゃない。好きじゃなかった。リアルのようでどこまでもフィクションのような気がするのである。そのせいか全体として浅いというイメージがある。死に至る病を抱えた恋人がいたことはないが、果たしてそう割り切れるものだろうかと。でも最近の自分や友人を見てると、いや、意外と人間はある意味で強い、ある意味で簡単なのかもしれないと。そう思うと本作もちょっとは意味を持ってくる。

これできみの話をするのは最後になる。でも、ぼくはきみのことを忘れないし、この物語を読んだ人も誰ひとり、峯岸美丘というちょっと変わった女の子のことを忘れないだろう。春の嵐や夏の稲妻のように短い生涯を駆け抜けたきみのことをきっと記憶にとどめてくれるだろう。


(19/50)