廃墟建築士 / 三崎亜記 / ★★★★☆

廃墟建築士

廃墟建築士

無機物の中でもとりわけ建物に意味を与える三崎ワールド。七階、廃墟、図書館、蔵。特に廃墟の「完成された都市における安らぎとしての存在」という位置づけが好き。確かに、ガラス張りの高層ビルが立ち並ぶ都市における廃墟は不完全な人間にとってある意味心の拠り所となりえるのかもしれない。あえて不完全な廃墟を設計して建築する“廃墟建築士”。うーん、ロマンティック。

我々倣慢な人間は、時にすべてを意のままに扱えると錯覚を起こしがちだ。だが、自然は人とは違う時間と秩序で超然と存在し、忘れた頃に情け容赦なくすべてを蹂躙し、無に帰する。人間の営みもまた、秩序の中の要素にしか過ぎぬことを知らしめようとするようだ。我々は自然の手の上で弄ばれていることに気づかずに羽目を外しすぎ、いつか掌を返されて慌てふためくのだろう。


(27/50)