白夜行 / 東野圭吾 / ★★★★☆

白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)

大人たちの愚行が少年と少女の運命を狂わせる。20年にも渡る悲痛なミステリー。ダ・ヴィンチ東野圭吾特集で「ナンバーワン悪女」に本作の西本雪穂が選ばれていたので拝読。でも人の心を失ってしまった彼女は悪女というより、ただ壊れてしまった人形のようでした。人の心の闇のなんとも深いことよ。


日航機墜落事故など現実に起きた出来事を作中に登場させることで年月の経過を読者に感じさせ、また二人の視点は一切排除し、あくまで二人を取り巻く人々の目線から話を進めていくことで二人を最後まで理解することのできない、畏怖の対象にする。そういった細かい技巧も冴えた作品でした。

「あの時に摘み取っておくべき芽があったんや。それをほったらかしにしておいたから、芽はどんどん成長してしもた。成長して、花を咲かせてしまいよった。しかも悪い花を」笹垣は口元を歪め、酒を流し込んだ。


(39/50)