果つる底なき / 池井戸潤 / ★★☆☆☆

果つる底なき (講談社文庫)

果つる底なき (講談社文庫)

同僚の坂本が死んだ。事故だと思われた彼の死だが、不審に思った伊木は彼の残したものを調べ始める。不正送金、融通手形、横領、和議申請。果たして彼の追っていた真実とは。銀行を舞台にした金融ミステリー。江戸川乱歩賞受賞作。


ミステリー部は確かに面白いが、なかなか登場人物たちの感情が伝わってこない。文中で表現されてはいるものの、タイトルにもなっている伊木の憎しみなんかはもう少し生々しく描かれてても良かったかなって。あと無駄な殺人が多すぎるのもマイナス。最新作『下町ロケット』が大ブレイクしているので、そちらに期待しよう。

形もなく、概念もないもの。あるのはただ、醜い思念のみ。まさに暗渠だ。魂の深淵、果つる底なき暗澹たるもの。それは単に価値観などという尺度で説明しうる範囲を超越している。始まりも終わりもなく、きっかけすらつかめない狂気。これ以上、こいつを生かしてはおけない。


(4)