食堂かたつむり / 小川糸 / ★★★☆☆

食堂かたつむり

食堂かたつむり

おっぱい山を臨む山あいの小さな村。そこにひとつの食堂があった。その名は「食堂かたつむり」。お客様は一日一組。メニューはなく、事前にお客さんと面談をし、お客様が食べたいメニューを出す。そして食堂かたつむりで食事をした人にはささやかな奇跡が起こる――


やっぱり『かもめ食堂』を思い出すよね。全体的に柔らかい雰囲気は小川洋子を彷彿とさせるが、細かな表現や言い回しが小川洋子の世界ほど洗練されていなくてちょっと残念。それでも優しい気持ちになれるのは確かなので、深く考えず、スポンジケーキのように素直な気持ちでふわっと読むのがよい。


そういえば『かもめ食堂』も原作があるんだっけ。読みたいな。

食堂かたつむりはどうかしら!
と、ひらめいた。
(中略)
あの、ちいさな空間をランドセルみたいに背中にせおって、私はこれからゆっくりと前に進んでいくのだ。
私と食堂は一心同体。
一度殻の中に入ってしまえば、そこは私にとっての「安住の地」以外のなにものでもない。


(9)