MISSING / 本多孝好 / ★★★☆☆

MISSING (双葉文庫)

MISSING (双葉文庫)

人は毎日何かを得て、そして何かを失って生きていく。それは100均で買えるような些細なものであるかもしれないし、それは一生背負って生きて行かなければならないものかもしれない。これは何か大きなものを、それまではずっと心の中に、当たり前のようにあったものを失ってしまった人たちのちょっぴり哀しい物語である。


ザ・小説。セリフが良い意味で不自然で、それはどこかお芝居を見ているような気分にさせてくれる。どちらかというと短篇集って敬遠していたけど、短篇集もいいかもって思った。物語自体は切ない系だけど、読後感は良い。


それと本多孝好の名前をどこかで見たことがあると思ったら、『チェーン・ポイズン』と『FINE DAYS』が既読だった。どちらも今でも覚えている名作。どうりで。どうやら“好きな作家”らしい。


とりあえず『チェーン・ポイズン』は一読の価値あり。

一度会っただけなのにもかかわらず、その後ろ姿を一目見ただけで、僕はそれが幽霊ちゃんだと察した。彼女が町を拒絶しているのか、あるいはその逆なのか、彼女は一人、町の景色から浮いていた。


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