乱暴と待機 / 本谷有希子

乱暴と待機 (ダ・ヴィンチブックス)

乱暴と待機 (ダ・ヴィンチブックス)

お兄ちゃんと私のお話。以前読んだ『あの子の考えることは変』の本谷有希子作品。


なんか、この狂気にハマッてきた。本谷有希子作品を漢字一文字で表すなら間違いなく「狂」だと思っていたのに、それはあくまで表面にある殻のことで、その中にはたっぷりとドロドロの「愛」が詰まっていることに気がついてしまった。その狂気に包まれた愛を丸飲みしてみたい、そんな背徳的な魅力に私は取り憑かれてしまった。舞台作家特有の、感情が濃縮された物語をお楽しみ下さい。

私がお兄ちゃんとずっと一緒にいられる理由があるとすれば、もう嫌われることはない、という安心感によるものかもしれない。(中略)それに復讐相手として憎まれている限り、お兄ちゃんが私から離れていくことだってない。だからいくらあずさちゃんに頭がおかしいと言われようが、復讐という関係性だけは失うわけにはいかないのだ。
私達はその一点だけでつながっている。
私にとって、それはたとえば愛情関係なんかよりもずっとずっと確実なつながりに思える。