永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢 / 重松清 / ★★★☆☆

永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢

永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢

死ぬことのない男、カイム。彼は千年の時を旅し、数えきれないほどの出会いと別れを繰り返す。永遠の生を通して描かれる、限りある生の美しさ。連作短編集。


ゲーム『ロスト・オデッセィ』の世界を舞台にした作品。テーマは“永遠の生と限りある生”。何かの価値を示すのにその対極に位置する物を引き合いに出すのはよくある方法だが、本作もそれ。同じ世界にいればそれを理解することはできる。しかし、その世界にいる限りその価値を見出すことはできない。それは自分自身にも言えて、自分のことはもちろん誰よりも自分が一番理解している。しかし、自分の価値は決して自分で測ることはできない。だからおごらず、慎み深く生きよ。そんなことを思った。


テーマとしてはすごく面白いんだが、結論が同じ短編がひたすら並ぶから、若干飽きてくる。もう少し選別されてても良かったかな。

だが、カイムは知っている。はてしなく長い「生」を生きつづけるからこそ、ひとの暮らしに「永遠」などありえないのだと、数えきれない別れの痛みとともに噛みしめている。
この暮らしは、いつか、終わる。ずっとこのまま、ではいられない。
しかし、それは決して悲しむべきことではない。「永遠」を手に入れることがかなわない人間たちは、その代わり、「いま」を愛し、慈しむことを知っているのだから。


(8)