黄金を抱いて翔べ / 高村薫 / ★★★★★
- 作者: 高村薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1994/01/28
- メディア: 文庫
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映像化されるということで再読。まさに高村薫の原点とも言える作品。北とか南とか左とか右とか、そういった政治の黒い部分を大胆に使いながら、状況描写のディテールにはとことんこだわる。高村さんの取材力の高さに改めて感嘆する。そしてアウトローに生きながらもどこか人間臭さを感じさせる登場人物たち。頼れるものがないからこそ、彼らの生き様もまたかっこいい。
はじめて読んだときの衝撃はなかったものの、やはり名作だなあ、と。映像化向きの一冊。
フェンスの向こうに沈む街に、朝もやが立った。泥色の屋根の群れが輝き出した。アサヒビールの煙突の煙が、ほぼ真っ直に立ち上っていた。風はなかった。操車場で動き始めた列車の音が、よく通って聞こえた。
天気は快晴。師走の大阪を、世紀の大泥棒が駆ける日だった。
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